マスコミ市民('99.11) 埼玉新聞記者・近田洋一

森口豁著「沖縄・近い昔の旅」から  非武の島の記憶
沖縄とかかわったジャーナリスト40年の集積(その一部をご紹介)

 沖縄の米軍普天間基地の移転先が、名護市の辺野古地区に決まりそうだ。住民投票ではっきりと拒否の意思表示が出ているにもかかわらず。来年7月の沖縄サミットを控えて、「移転先は県内に」という、クリントン米大統領の要請を受けてのことだ。マスコミの報道はどうか。なまぬるいし、現地、とりわけ東海岸に面した辺野古地域一帯の怒りは伝わってこない。沖縄基地問題をめぐる一連の動き。日米ガイドライン関連法が成立したときもそうだった。マスコミは沖縄と本土の受け止め方の違いを「温度差」と表現した。身体でいうなら、微熱と命を失いかねない40度前後の熱では本質的に違う。これを温度差と言ってのける今のマスコミに、同じ仕事に携わっていながらどうしようもないいらだちを覚える。

 元日本テレビディレクターでフリージャーナリストの森口豁氏の近著「沖縄・近い昔の旅」(凱風社刊)は、本土と沖縄の間に横たわる絶望的とも言えるこの距離が何であるかを解き明かした。それはあの沖縄戦の軌跡をたどり、今の風景から肌で感じ取り、狭間(はざま)にあって引き裂かれた自己を検証する作業でもある。島の人びとは決して希望を失わないし、南の国から私たちをいやし、日ごろの私たちの生き方に示唆を与えてくれる。34本のエッセイと150枚余の写真からなる本書とともに、沖縄の「非武の記憶」をたどって「近い昔の旅」をしてみよう。

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