沖繩・琉球新報
1999年(平成11年)6月20日 新城和博(ワンダー編集長)
森口豁「沖縄 近い昔の話ー非武の島の記憶」 沖縄戦争の記憶
未来を旅する若者に語る
来年のサミットの話題で、幾人かとこんな話になった。いわく、「観光沖縄を全世界にPRするチャンス。そんな時に、沖縄戦のことや米軍基地による被害を訴えるのは、ナンセンスだ」。沖縄戦、基地被害というイメージは、観光沖縄にとってマイナスでしかないという。この島が体験した傷は、こんなふうに忘れ去られるべき記憶なのだろうか。
フリー・ジャーナリスト森口豁氏が、特に若い人に読んでほしいという強い意志を持って出版された本書は、こうした風潮に対して真っ向から反対する。本書の基準点は、私たちにとって近い昔である「沖縄戦」である。米軍統治下の五十年代、沖縄出身の親友、故金城哲雄さんに導かれて、沖縄戦の実相を垣間見た高校生の筆者は、その時の個人的な衝撃を風化させることなく、一貫して「沖縄」にこだわり続け、約四十年間の間に多数のテレビ・ドキュメンタリーやルポルタージュ作品を作り上げてきた。
本書は、そのこだわりを「気の向くままに書き連ねた」とする文章からなるが、森口氏の広範囲にわたる仕事の成果を要約する構成となっている。また客観的な数字や実例を脚注で豊富に示しており、「沖縄問題」の入門書として最適だが、本書の特徴は、筆者があくまでもひとりの人間として、国家のエゴで実際に傷つき苦しむ個人から視線をはずさないことである。
沖縄に生きる人間が苦しみ、死んでいった。だがその事実をリアルに感じることが難しい時代にわれわれは生きている。だからこそ著者がこだわる「沖縄の根っこをまさぐる」作業、例えば「沖縄戦」を知ることは、以前にもまして必要なのだ。
本書には、沖縄の不条理な現実と相反するような、島の子ども、市場、祭りなど、沖繩の明るくたくましい素顔をとらえた写真を、数多く収録している。そそがれる眼差しはやさしく、だからこそ切ない。沖繩の記憶は「非武」かどうか。それはこの島で未来を旅するわれわれにかかっているのであろう。
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