信濃デッサン館ニュース」vol.81

信濃デッサン館 館主 窪島誠一郎

病境にある二人の表現者の近著に胸をゆさぶられた。
一冊は作家辺見庸氏の『自分自身への審問』(毎日新聞社刊)。脳出血と癌におそわれた辺見氏が、死に瀕した自らにむかってなおも「平和とは?」「改憲とは?」と問いつづける魂の剛力にただ頭を垂れた。
そして、もう一冊は映像ジャーナリスト森口豁氏の『だれも沖縄を知らない』(筑摩書房刊)。糖尿病と心臓病にさいなまれながら、沖縄県内三十余の離島をめぐった氏の「日本復帰・後史」の聞き書きのもつ豊潤な知の響き。
先日久しぶりに宜野湾市の佐喜真美術館で森口氏と再会、闘病中の氏の変わらぬダンディな笑顔に接してホッとする。自分は「死」がこわいのではない、「不完全な生」がこわいのだ、といって私に握手を求めた氏の手は力強かった。『だれも沖縄を知らない』は私の館にも置いてある。残部少々、税別一九〇〇円。

(本稿は「信濃デッサン館ニュース」vol.81=2006年4月1日発行「編集後記」より転載)

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