02 解説

NHK論説委員 小秋元隆一

 6月14日、アメリカ政府当局者は、記者団の質問に対して「アメリカは日本の基地を安全保障条約が改訂されるまで使用する。又沖縄を返還する時期は極東に緊張が続く限り、つまり予見し得る将来には考えられない」と言う重大な公式見解を発表しました。

(中略)

 こうした重大な発表は、去年末沖縄の土地問題を視察して帰ったプライス議員団が、沖縄基地の使用継続、接収土地補償費の一括支払いによる永代借地権、必要な範囲での追加使用を認めることなどが必要であると勧告しておりますことから、記者団にアメリカ政府の正式な見解公表を迫られ発表したものであります。
 これらは、私共日本人にとって、日本のアメリカ軍用地も、沖縄の基地も、これでは半永久的なのではないかという印象が強く感じられます。なる程、日米安全保障条約第4条に起きましても、日本に於ける基地の使用権、又沖縄、小笠原等は、アメリカの三権(司法、立法、行政)を認められております。この2つの取り決めはすでに4年前からチャンスと決まっていたことで、いまさら驚くにもあたらないことですが、さて、アメリカ政府当局の公式見解として改めて「日本のアメリカ軍事基地は安保条約が改正されるまでは必要なら永久に何年でも待ち続けられ、沖縄の返還はまず予見し得る近い将来は考えられない」とつっぱなされてみなすと、事態の深刻さにいまさらながら大きな衝動を覚えるのであります。

(中略)

 今迄政府や保守党の人々は「本当に日本が独立するには、一日も早くアメリカ軍に撤退してもらわなくてはならない、それは国力に応じた日本の自衛の軍備をもたなくてはならない、そのためには憲法も改正しなくてはならない」と国民に再軍備と憲法改正を解いて来ました、しかし今度のアメリカ政府の公式見解によりますと、安保条約が改正されるまでは百年でも無限に日本の基地を持ちつづけることが出来るというのです。その安保条約の改正では日本の合意ではじめて改正出来るというのですから、日本が改正したくてもアメリカがまだまだそれでは不安だ、撤退出来ない、といいはればいつまでたってもアメリカ軍の撤退は認めないということがはっきりしています。

(中略)

 沖縄の島民が今、比嘉琉球政府主席以下島をあげて反対している接収土地の権費の一括払いが永久借地権を意味するということになりますと、沖縄が日本に返還されるという様な希望はほとんど薄れて、いわゆる日本の潜在主権というものも将来、なしくずし的になってしまうのではないかという心配さえ出て来るのです。

 サンフランシスコ平和条約の第3条をよく読んでみますと、日本は沖縄や小笠原などを制度の下におくことにすでに同意しております。と申しますことは将来アメリカがそういう申し出を国連にする時には、日本はそれに同意するという約束を前以ってしているのです。アメリカの信託統治の下におかれるということは、日本主権がその時には事実上、失われるということです。そしてそれまではアメリカの行政、司法の三権の行使を認めるというのですから、どっちみち日本の潜在主権はいつまでも続くというのではなくて、将来失われる方向にあるのだということになります。

(中略)

 国際情勢のきびしさは、そんなどうなるかわからない潜在主権がどういう空証文に等しいものをあてにすることを許さないのではないかという考え方です。

 いま国民は北は千島から南は沖縄に至る日本列島に展開されている目に見えぬ米ソの冷たい戦争、国際情勢のけわしさを身にしみてヒシヒシと感じさせられております。

(後略)                −NHK6月19日「今朝の話題」より要約−

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