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沖縄通信 No3 &4

再び「沖縄サミット」について

"基地隠し"

 3月9日、約20日ぶりで沖縄入りした。那覇空港から那覇市内に向かう道路沿いでは、今にも降りだしそうな空の下で歩道の改装工事が行われていた。サミットに向けた道路の化粧直しのようだ。歩道と"原野"を仕切るフェンス沿いに、サンゴ礁石灰岩が積み上げられ、沖縄らしさが醸しだされていく。植栽された亜熱帯の街路樹とも相まって「なかなかの出来」と映る。

 だが、ちょっと待てよ。この工事、国による基地隠しではないのか。一見して原野に見えるこの一帯は、じつは自衛隊基地なのだ。那覇空港から市内に入る道路の右側は、ターミナルを出て間もなくすると自衛隊基地のフェンスが延々と続く。しかも程なくして道路の左側には米軍港が展け、車はフェンスとフェンスの間を縫って市街地の入り口まで走る格好となる。沖縄を訪れる人たちは、沖縄に着くなり、"基地の島"の実感を味わうことになる。

 沖縄入りの第一印象が広大な軍事基地では、誰だってやりきれまい。それはこの国の政府にとっても同じであろう。

 ---観光客は青い空の海を堪能してくれればいい。ましてや、サミット取材で海外から訪れる数千人ともいわれる取材陣の関心の的が「広すぎる基地」であったり、「住民を苦しめる基地」であってはならない。 

 かくいうわけで「石垣を築いての基地隠し」、というのが私の推測だ。

 国による基地隠し、じつは今に始まったことではない。1972年の沖縄の復帰後、国が力を入れている一つにフェンス内外の植栽がある。前述の自衛隊那覇基地や浦添の国道58号沿線の米海兵隊の兵站基地・キャンプキンザー、そして嘉手納基地のフェンスの内側には夾竹桃が植えられていた。夾竹桃は四季を通して根元からうっそうと葉が生い茂るので、目隠しとしては最高なのである。しかも美しいピンクの花の咲き乱れる季節ともなれば、目くらまし効果は絶大である。フェンスの内側にぜいたくなほどに広がるキャンプキンザーや嘉手納基地などの広大な敷地も、武器を腰だめにして実践訓練をする自衛隊員の姿も、外からはまったく見えない。しかも、都合のよいことに「美観」がよくなるのだから、文句をいう人はいない。

 那覇空港近くの石垣は金額的には随分高価なシロモノに違いないが、観光立県の玄関口とあらば多少の贅沢も許されよう、というわけか。

辺野古区長の自殺未遂

 ところで、今年の年明け早々、私を重い気持ちにさせた出来事は、名護市辺野古の区長の自殺未遂事件である。琉球新報(1月31日付け夕刊)によると、辺野古区の嘉陽宗健さんが同月24日、自宅で毒物を飲んで自殺を図り、病院にかつぎこまれた。嘉陽区長は病院での事情聴取に対して「ヘリポート問題で悩んでいた。自殺しようと思った」と話したという。

 嘉陽さんは、ここ半年、辺野古地区が普天間基地の移設候補地として有力視されてきたことで、それに反対する区民と賛成する人たちの間で苦悩していた。テレビや新聞で伝えられるこの人の話からは、本人は大多数の区民同様、基地の受け入れには反対のように見てとれたが、誘致派、とりわけ地元の土建会社からは陰に陽に圧力をうけていたといわれる。小さな地域が賛否両派に分かれて対立、互いの人間関係を気まずいものにしていく。

 沖縄県と名護市は昨年末、基地移設先を政府のお膳立て通り「辺野古沿岸域」と決めたが、地域の共同体社会をこうして破壊するようなことをなぜ国や県、そして市長までが率先してやっていくのか。嘉陽区長の自殺未遂事件の意味を行政も、我々市井の民も決して軽んじてはなるまい。

小渕首相の退陣と沖縄サミット

 さて、本題に入ろう。

 小渕首相の突然の退陣を受けて、4月5日森嘉朗自民党幹事長が第85代首相の座についたが、もし森首相の下でこのまま沖縄サミットに突入することになると、私は<沖縄>にとって益々このサミットが危険なものになるのではないか、と恐れる。

 森氏は自民党内の"復古派"議員の一人。これまで文部、通産、建設の各閣僚を経験したが、外交や防衛などの力量は全くの未知数。国を治める理念もビジョンも持ち合わせないまま、自・公・保3党の永田町の理論で首相の座を得た。その課程で国民の意志など入り込む余地は皆無であった。こんなかたちで一国の首相が決められていくこの国の民主主義の未成熟。私たちは、遅かれ早かれで"国の不幸"を思い知ることだろう。

 それにしても、今回の総理大臣選出劇は、自民党国会議員に"首相の器"たる資質を持つ人材のいないことを改めてさらけ出した。小渕首相入院と同時に党内で次期首相候補として挙がった顔ぶれのどの一人を見ても、私たちは「首相にふさわしい人物」を見いだすことはできなかった。そして結果は、その中でも最も「首相になってほしくない人物」が選出される始末である。

 とりわけ、この人の政治家としてのレベルの低さは、いかんともしがたい。沖縄に関していうならば、森氏はつい先刻(今年3月20日)石川県内で行った講演で次のような発言を行い、沖縄県民の猛反発を受けたばかりだ。

 森氏は、講演に先立ち、昨年11月の天皇在位10周年記念式典のビデオを上映、それを踏まえてこう語った。

 「テレビでご覧の通り、みんな「君が代」を、ねえ(歌っていたのに)、沖縄のAさん(引用者注・歌手の安室奈美恵さん)だけ口を開かなかった。つまり、恐らく知っているんだろうと思うけれども、学校で教わっていないんですね。

 沖縄はいろんな歴史、立場を抱えて、特に沖縄教組というのは共産党が支配していますから、沖縄の先生、沖縄の新聞、二つあります、琉球新報、沖縄タイムスも恐らくそうです。だから何でも政府に反対、何でも国に反対。ですから、子供もみんなそういうことを教わってきた。だからAさんは(「君が代」で口を開かないんじゃなくいて、歌ったことがなかったのかなという感じがしました」(沖縄タイムス、3月23日付け朝刊)

 政府与党の幹事長がこのような事実認識しか持たず、講演会というおおやけの場で公然と組合ばかりかマスコミ批判をしてはばからない。しかも、沖縄タイムス紙のインタビューに対し、森氏は発言の主旨をこう語っている。

 「沖縄サミットを契機に本土と沖縄の関係をできるだけ円満にしていかなければならないと訴える中で話した。(中略)サミットの成功でそういうことも払拭して、本土と沖縄の気持ちを一つにしたいと話した」

 そして記者の「教職員組合や県内二紙を批判しているが」の問いに対し、「批判はしていない。(中略)沖縄はどうしても組合は強いし、共産党はかなり入り込んでいたと、みんなから聞いている。沖縄タイムスも琉球新報にもそういう人たちがたくさん入っており、反権力で政府や自民党のことが素直に正しく伝わらないことも数々あった、ということを申し上げただけだ」 

 つまり、同氏は発言の撤回はもちろん、謝罪の意志もなく、むしろ自らの発言を正当化してはばからないのである。奇しくも森氏が口にしたように、彼は沖縄サミットを沖縄県民の思想の平準化=本土との一体化をするチャンスと心得ているのである。そうか、九州や大阪などサミットの開催を国に働きかけていた他の候補地をおしのけて国が開催地を沖縄に決めた背景にはこうした理由もあったのか。合点のいくところだ。

 米国の狙い、日本の狙い

 一方、アメリカは沖縄サミットをどう受け止め、活用しようとしているのであろうか。これについて私は、前回の通信(2月号)で、沖縄サミットが「沖縄基地の重要性の確認の場」になることを恐れた。その後米国から伝えられるニュースは、私のそうした危惧を現実化しつつある。

 昨年6月、琉球放送はCBSニュースのブルース・ダニング・アジア総局長とインタビュー。その中でダニング氏はこう述べている。

 「アメリカにとって沖縄サミットは沖縄に基地を置いていることの重要性を主張する絶好の機会です。アメリカは基地についてできるだけ都合のよい主張を並べてくるでしょう」

 こうしたジャーナリストの予測は、今年2月18日のクリントン大統領と河野外相の会談で速くも的中した。ワシントン発の共同電によると、クリントン大統領はこの会談で、沖縄サミットに関連して「沖縄の戦略的重要性」に言及、「日米関係が戦略的見地から重要であることを示すよい機会だ」と指摘、さらに「日米の戦略的関係は北東アジア安定の基盤を構成している」と、米軍基地の重要性を強調した。

 米国の沖縄基地への執着と、米外交のしたたかさを思わせる言動である。私が沖縄サミットの危険性を指摘する所以である。このようなしたたかな外交戦略に、一国の宰相としての資質に乏しい、対米一辺倒の森首相が真正面から立ち向かえないことは火を見るより明らかだろう。その意味でも、小渕退陣、森政権の誕生は、沖縄の将来に一層の暗雲となろう。サミット前の衆院解散、総選挙により悪政の一掃をはかることが急務である。


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