遣唐使文庫


ぱたぱた事件

 ただ今10月20日夜10時です。毎晩11時過ぎの夕食だったので打ち込む暇がありませんでしたが、今日は早く夕食をとることができたことですし、ここで今日一日を振り返り少しだけ報告しようと思います。

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 今日は朝9時過ぎに洛陽市外国語学校に到着。校門には「フェリシモ遣唐使文庫使節訪問団歓迎」の赤い旗。学校の応接間に通されて校長先生やほかの先生方のお決まりの挨拶(昨日の2校の経験で「上の立場の先生のご挨拶」のパターンはどこもほんとに同じ。)が終わると、高校1年生の教室に行きます。昨日は1日に距離の離れた2校を訪問するという強行軍だったのですが、時間との戦いのスケジュールの中、孫先生が私にささやいてくださったアドバイスは「偉い先生との話は早々に済ませて子供たちと話をする機会をたくさん持ちましょう。お決まりの挨拶ばかりしていても拉致があきません」ということで、この2日間の孫先生の口ぐせは「さあ、早くいきましょう」「さあ、時間を節約しましょう。」で、中国側との社交上の交渉ごとになれていない私達を誘導してくださいます。孫先生は79才という高齢にもかかわらず、なにしろお若い。たったったとどこにでも歩いていかれます。

  高校1年生の子供たちは、日本の高校生よりもずっと無邪気で子供らしい印象を受けます。団長さん、うさぎさん、そして私が壇上に上がって語りかける言葉のひとつひとつを一生懸命聞いてくれます。

 洛陽市外国語学校は、日本人が全部で10人しかいないといわれている洛陽市にあって特に恵まれた「キースクール」といえる学校です。まず、洛陽市と姉妹都市である岡山市との交流。これにより岡山市の平福小学校、福田中学校と洛陽市外国語学校との交流があります。私が質問したところ、生徒全員が岡山の学校の生徒と文通をしていました。また、岡山市のライオンズクラブからも手厚い援助を受けているようで、金銭的な援助に加え、先生の日本への招待などを行っているようです。このように日本との交流を日常的にしている学校は洛陽ではここだけのようです。

 このような恵まれた学校にも関わらず、そして、日本語のクラスの生徒が180人もいるにも関わらず、日本語の本はほとんどありません。生徒たちは、わらばんしのような紙質のテキスト1冊だけを使って日本語の勉強をしています。

 図書室を見せてほしいと校長先生にお願いしたのですが、「今担当者がいないので開けられない」という答が返ってきます。「午後になったら大丈夫か」と聞いても「いや、できない」という答。どうも図書室を私達には見せたくないようです。代わりに、ということで「閲覧室」に案内してくださったのですが、がらんとした部屋の机には厚さ6センチほどの本の入ったボックスが40ほど並べられていました。「あら、いろんなジャンルの本がちゃんとあるのね。」とボックスに触れた途端、机に並べられたボックスのひとつが隣のボックスに触れ、あらら見る間にドミノ倒しのように次々に倒れていくではありませんか。「あららららら」私はとっさに「反復横飛び」で鍛えたジャンプ力でまさに床に落ちんとする最後のボックスを支え、事無きを得たのでした。

 この小さな事件で明らかになったのは、私のドジさ加減、ではなく、「いかにこの閲覧室が普段使われていない見せかけのものか」ということなのです。そのことを喝破したのは孫先生でした。「ちょっと触っただけでだーっと倒れてしまうような箱に入れた本など、子供たちが触ったら毎日ドミノ倒しを繰り返すことになってしまいますよね。」と孫先生。この事態に赤面していた私をなぐさめてくれました。後に午後のクラス訪問で何人かの生徒に「図書室は使いますか」と聞いたら、「使いません」とやはり答えていました。

 ちなみに、授業の始まるのは朝7時30分、終わるのは5時、その後自習の時間があり、平均1日8時間から10時間勉強しています。その熱心さは昨日訪問した2校でも同じで、みな、大変上手に日本語を話します。ちょっと勉強に疲れ気味の子も見かけます。

 昨日訪問した鄭州外国語学校には、前日上海で行われた全国日本語弁論大会で優勝した中学生の女の子がおり、その利発さは日本のいわゆる秀才よりもずっと賢そうな感じの女の子で、流暢に現在の中国の厳しい受験戦争事情を話してくれました。たった15才なのに、実に客観的に受験のための知識偏重教育について認識しており、そのうえで積極的に勉強に取り組んでいるようで、本当に驚きました。彼女の弁を忠実に再現すると「このような知識重視の勉強や、競争で他の人に勝つための勉強は、頭の健康にも心の健康にも悪いのです」それでもかわいいなあ、と笑ってしまうのは、ときどきあどけない日本語の間違いをするのです。彼女がにこにこしながら私に「日本のキンカクシはきれいですね。」と言ったときは、中国のトイレ事情と日本のトイレ事情のことを言ってるのかしら?と首をひねりましたが、よく聞いてみると、「金隠し」ではなく「金閣寺」のことだった、とか。

 今回の訪問の旅でもうさぎさんは大人気。沖縄の紅型の着物をつけて教室に現れると、子ども達の視線はうっとり。うさぎさんから一瞬も目を離さず見つめています。教室は、かるたで遊んだり、歌をいっしょに歌ったり、折り紙教室をひらいたり、飛行機をつくって飛ばしたり、楽しい一日を過ごしました。

・・・・が、「楽しかったね、よかったね。」で済ませられない一日でもありました。今後本を学校に送ることを続けるにあたって、この中国でスムーズにことを進めるのは大変なことなのだということがはっきりわかってきたのです。

若葉あらため、若菜

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